「その絵を描いた人の名前は……」
名前は……?
「麻倉希空さん。君だよ」
え……。
「ありがとう、あんなに素敵な絵を見せてくれて」
えぇぇっ⁉
わ……私の絵⁉
「あ……青野くん……本当なの……?」
「本当だよ。そんなこと噓を言ってどうするの」
た……確かに。
「それに、顔と名前が一致した」
え……?
顔と名前が一致した……?
青野くんとは今日初めて話をしたのに。
顔と名前が一致したって、一体どういう……?
今の青野くんの言い方だと。
まるで前から私の顔を知っていたように聞こえる。
「あのとき俺は君のことを知ったんだ」
あのとき……?
「去年の体育祭、リレーでアンカーをやったんだけど、
すごく張り切っちゃって。
張り切って走ったのはいいんだけど、
ゴールを通過したときに、その勢いが止まらなくて、
そのまま派手に転んじゃって」
それは、危ない。
そう思っている間にも、青野くんの話は続く。
「そのとき、肘と膝をすりむいちゃって」
それは……痛そう。
「それで俺は、すぐに手洗い場に行って、傷口に付いた砂を流してたんだ」
……あれ……?
手洗い場……。
傷口に付いた砂……。
流す……。
それって……。