「えっ‼」


 ……っ⁉


 青野くんが突然驚いたような声を出した。

 私は、その声に驚き過ぎて声が出なかった。


「今、『麻倉希空』って言った?」


 ……?

 言ったけど……。


「……? うん……?」


 何が何だか。
 わけがわからない。

 そう思ったまま、そう返事をした。


「君があの麻倉希空さんっ⁉」


『あの』って……?

 青野くん、それは一体どういう……?


「実は俺、去年の文化祭のときから君の名前は知っていたんだ」


「えっ⁉」


 昨年の文化祭のときから……⁉

 どういうこと⁉


「去年の文化祭のとき、各クラスから五人ずつ、
 上手に描かれている絵がフリールームに展示されてたでしょ。
 それで俺は見に行ったんだ。
 みんなの上手な絵を見てみたくてさ」


 青野くんはそう話し始めた。


「やっぱり思った通り。
 みんな、すごく上手くてさ。
 俺、感動しちゃって」


 そう話している青野くんの目はキラキラと輝いていた。


「どの絵も感動した。
 ……だけど」


 だけど……?


「その中でも一つ、特に心を打たれた絵があったんだ」


 心を……打たれた……?


「その絵を見て感動したのはもちろんのこと、
 なんてい言えばいいのか、気持ちが晴れやかになるというのか、
 とにかく一言では言い表すことができない、そんな絵だった」


 青野くんがそんな気持ちになった絵。
 それは、どんな絵なのだろう。
 そして誰が描いたのだろう。


「そんな絵を描いたのは誰なんだろう。
 俺、すごく気になっちゃって。
 だから俺、すぐに見たんだ。
 絵の下に貼られている名前を」


 それで、その絵を描いた人の名前は……?