4月。家から2駅の大学の入学式へ向かう祥は慣れないスーツ姿に身を包んでいた。
『朱里はどこにいるんだろう』
電車内でも朱里のことばかり考えてしまう。せっかく東京に戻ってきたのに会えず、今日に至る。考えすぎても仕方がない。再会できることを祈るだけだと思い、電車を降りた。

入学式の会場へ向かう途中、色んなサークルに勧誘されるのを避けながら朱里を探してみた。しかし、朱里に似た人は居ない。
「君、イケメンだね。どこの高校の人?ねぇ、お姉さんたちと入学式の後遊びに行かない?」
知らない女が俺に話しかけてくる。朱里を探したいのに邪魔をしてくる。仕方がない、返事くらいしてやろう。
「すみません。入学式後、用事がありますので」
「用事?そんなのすっぽかして遊びに行こうよぉ」
「すみません」
「え、じゃあ〜 連絡先だけでも教えて!」
「今日、初めてあった人に連絡先教えるような軽い男じゃないので。失礼します。」
これが東京か、と思いつつ入学式会場へと向かった。

入学式終了後、再度探してみる。やっぱりこの大学じゃないのかな、と思っていると覚えのある名前が後ろから聞こえてきた。
「おう!あかり!入学式、どうだった?」
「お兄ちゃん!早速友達も出来たよ〜」
「女の友達か?」
「もちろん!明日から頑張るぞぉ〜!」
あ、あかり!? 俺の探してる朱里か!?朱里には1つ上の兄がいる。絶対朱里だ!と思い、振り向いてみた。
1番先に気づいたのは兄の雅人だった。
「あ、もしかして…。」
「うん?」
「あれって…」
「え!? 祥!?!? 祥だよね!?」
「え!?お、俺の事、分かるの?」
「あったりまえじゃん!! いつ帰ってきたの!?てか15年振り!? めっちゃ嬉しい!!」
そう言うと、朱里は俺に抱きついてきた。世間は狭いとはこういうことかと実感した瞬間だった。