顔を左に向けると、私の後に風呂に入っていた春樹の頭が目の前にある。
「冷たいよ。ほら、髪乾かさないと。」
「…乾かして。」
「はいはい。乾かすから頭上げて。」
素直に従った彼を軽く撫でて洗面所からタオルとドライヤーを持ってくる。
「いつになったら自分で乾かせるようになるの?」
「椿がしてくれるからいいの。」
いっつもそう言うんだから…
毎日、乾かしなさいって言ってるのに一緒に暮らし始めてから1度も自分で乾かして出てこない。
私はお母さんですかって言いたくなってしまうくらいだ。
なんて、正真正銘、私は奥さんなんだけどね。
この事実がいつでもすごく嬉しい。
「はい、乾かせたよ。」
「ありがと。」