俺は、ゆっくりと近づいた。 間違いない…。 千夏だ…。 千夏は、俺が近づいて来た事に気づかないように、ぼんやりと川の水面を見ている。 「千夏…?」 恐る恐る声をかけた。 「…え…?」 ドキッとした。 薄闇の中で振り返った千夏は、千夏じゃないみたいだった。 いつもの千夏の健康的な表情はカケラもない。 その顔は、青白く、浮かび上がって見えた。 「…隼人…」 千夏は、ゆっくりと俺の名を呼んだ。