と…。
カシャン…
という音がした。
彼女が、自転車の鍵だろうか…。
鍵を落としたみたいだ。
近くにいた俺は思わず拾いあげようと、手を伸ばした。
すると、彼女は、急にビクッ…としたように、手を引っ込めた。
「はい。これ。」
俺は不思議に思いながら、拾いあげた鍵を彼女に手渡した。
「あ、ごめんなさい…。
ありがとう…。」
彼女はうつむいたまま、小さな声でそう言い、鍵を受け取った。
「あの、さ。
おれ、今日転校してきたんだ。
2年4組に。
三浦隼人っていうんだ。
君、3組だよね?よろしく。」
俺は思わずその場で自己紹介してしまった。
彼女は突然のことにきょとんとしたようだったけど、
「あ、私…森下結衣です…。
よろしく。」
と、小さい声ながらも答えてくれた。
「じゃあ、私はこれで。」
そう言うと、彼女はその場を去って行った。