この車のエンジンのかけ方は知ってたけど、切り方は知らなかった。


普通にキーを差し込むタイプとか、鍵を持ってればエンジンかかるタイプとかなら分かるけど…。


無理にやって壊してもやだしな。


「車ん中にいるね〜」


それだけ送ると、タバコに火をつけた。
セブンスターの苦味が肺いっぱいになる。
はぁ。落ち着く…。


時計を見ると20時20分。
そろそろ…行こうかな…。


ガチャッ


『なーんでこねーんだよー!』


いや時間。とだけ言うと、あぁ!と声を上げ、速攻で車を出してくれた。


店の前に到着する。時間は20時50分。


「休もうかな…」


『今日だけは頑張ってこい!』


むっと不貞腐れた。なんだよ、今日だけはって。


やる気も起きずに、車を降り、店に入る。


カランカラーン


『おー!あみおはよー!』


「おはよー♪」


作り笑いに作った声。正直疲れた。


バックに行くと姉さん方が待機している。


「今日も暇そーですねえ」


『だねえ。ってあみちゃんおそーい!』


すみません♪なんて言いながら着替えに行く。


『今日も、あみちゃんのあのお客さん来るって言ってたって〜!』


「まじですか!ありです♪」


昨日も来たのに。と思いながら待機の椅子に座る。


座った直後くらいにボーイが呼びに来た。


『あみ!指名!やまちゃん!』


「はあい」


のそのそとセカンドバッグを持って立ち上がる。バックの中からポケット香水を取りだし、シュッと一吹きする。


『相変わらず、あみちゃんの香水いい匂いだよねえ♪』


「彼氏さんが選んでくれたんで♪」


のろけやがってこの〜!と後ろで叫んでるが、知ったこっちゃない。