「先生の話長引いて遅くなった。ごめん」
彼の声が聞こえてはっとなって、上を見ればわたしを不思議そうに見つめている彼と視線が交わる。
わたしはこの優しい瞳がすごくすきだった、
と唐突に思ってしまった。
びっくりしたときは大きくなって、わらったときは優しく細まるのに、子どもっぽくわらったときはクシャッとなる彼の瞳もすきだった。
「大丈夫。私こそ急に呼び出してごめんね」
「帰りながら話せばよかったのに急になんで?」
そう言われると思っていたから想定内だった。
躊躇なくわたしのとなりに座った彼の手がわたしの手と触れた。
いままでの私ならたったそれだけでドキドキしていたけれど、いまは消さなきゃいけないし、ちゃんとケジメをつけなければいけない。