「澤兄弟かぁ~」

部屋の中には、俺の悪友とその兄。

彼女が進学した高校の教師の姿があった。

「お久しぶりです。
澤先生。」

尚人とは、変わらず時々飲みに行くが………。

兄の澤先生に会うのは

彼女が外部受験の相談をした3年以来だ。

「おぅ!
尚から噂は聞いてるが………
相変わらず、真面目らしいな。
教師の鑑だと笑ってたぞ。」と

俺とは対照的に、人を食ったような悪い顔を浮かべて笑う澤先生が。

奥のソファーに促し、腰を下ろした。

「失礼します。」

頭を下げて、向かいの席に座ると

藤堂と尚人は『飲み物を買って来る』と言って

部屋を出て行った。




「……………で?
俺達の同窓会に合わせて、いらっしゃったのは??」

理事長といい

澤兄弟といい。

同窓会のタイミングで、集まるにはおかしなメンバーだ。

多分………藤堂のこれからに関係しているんだろう。

3年前、中学生だった彼女と別れて

全くと言っていい程連絡を取ってはいない。

けど俺は………

複雑な心を抱えた彼女と…………関わってしまった。

だから

このタイミングで再会するのは必然な気がするんだ。

……………藤堂………まだ俺の存在を

必要としてくれてるのか?……………。

『居もしない彼女』の存在をでっち上げて……ついた嘘。

そう言って、断った。

多分彼女は………嘘だと気づいていたはずだ。

生徒に嘘をつくなんて………最低な教師だよな。

もう、頭から消していてもおかしくないのに………

今日彼女の方から、時間を作ってくれた。