それだけは何としても避けたい。
今一条さんとは上司と部下の関係だけど、うまくいっている。
仕事で彼のそばにいられる……今のこの日常を壊したくない。
渋っていると、杏樹さんは急に真剣な表情で私を見つめた。
「何を躊躇ってるのか知らないけど、芽依ちゃんは瑠偉が欲しくないの?」
不意にそんなことを聞かれ、目を大きく見開いた。
この人、私が一条さんのこと好きだって知ってる。
初対面なのになんで?
「あの……一条さんが欲しいって意味がわかりません?」
わざと惚けるが、彼女は顔を近づけて私の目を見据えた。
「佐久間くんから聞いてるわよ。オフィスで弟に芽衣ちゃんが膝枕してあげてたって」
嘘……。
佐久間さんに見られてた?
「あの……その……それは一条さんが凄く疲れて寝てしまって……」
しどろもどろになりながら弁解する私を見て彼女はニヤリとする。
「好きでもない男に膝枕なんてしないでしょう?」
「杏樹さん……」