「社長付き第二秘書……藤宮杏樹?」
社長にはアンドロイドみたいな、完全無欠の東山誠司という男性の秘書がすでにいる。
今さらなんで第二秘書が必要になったんだろう?
しかも、聞き覚えのない名前だ。
私の時といい、本当に上の都合で人事って決まるのね。訳がわからない。
「一条部長いる?」 
不意に女性の声がした。
声の方へ視線を向けると、赤いスーツを着たすごく綺麗な女性が立っていた。
髪はダークブラウンでセミロング。化粧は完璧で目鼻立ちが整っていて、背も百七十センチくらいありそう。
まるで大輪の薔薇のように華やかな人。
どこかで見かけたよう……な。
でも、こんな美人、一度会ったら忘れるわけがない。
見たところ社員証もつけていないけど、誰なんだろう。
ここまでひとりで来てしまうということは、来客でもないはずだ。来客なら受付で止められるはず。
不審に思いながらも笑顔で応対する。