私の顔を見て優しい目で言う彼の言葉にピンときた。
「ああ、いわゆる肝っ玉母さんみたいな感じね」
 私が手をポンと叩くと、彼は首を傾げ苦笑いする。
「う~ん、なんかイメージ違いますけど」 
「そうかな?」
「東雲さんはもうちょっといろいろ自覚した方がいいと思いますよ。悪い虫だっているみたいだし、隠れ狼だってここにはいっぱいいるんですよ。僕みたいなね」
急に杉本くんが距離を詰めてきて妖しく微笑んだ。
身体がゾクッと震える。
え?杉本くん、どうしちゃったの?
彼を初めて怖いと思った。
今まで弟みたいな可愛い子という認識だったけど、彼も男だと改めて気づかされた。
「や、やだ、冗談きついな!」 
動揺しているのを悟られたくなくて、杉本くんの背中を力一杯叩いた。
「痛い!」
不意打ちだったのか杉本くんが身を屈めて呻く。
「もう、杉本くん大袈裟だな。私そんな馬鹿力じゃないよ」