目も見開いたまま。
この状況に驚いているのだろう。
自分だってこんな真似して驚いている。
よく見ると彼女は瞳も大きくて可愛い顔をしている。
艶やかなボブカットの髪もサラサラしていて、触ると気持ち良さそうだ。
「花……咲かせてみようかな」
ボソッと彼女の耳元で呟くと、思わず笑みが零れた。
イライラの原因は……たぶん異性として彼女が気になるからだ。
一度認めてしまえば、なぜか心はすっきりした。
「杉本さん……どうして?」 
彼女は俺を見つめたまま問いかける。
自分を呼ぶその声だってこんなに可愛いのに。
今まで気づかなかった僕は意外と鈍感だったようだ。
でも、名字で呼ばれるのはあまりに他人行儀すぎて嫌だ。
だったら……。
「ふたりの時は、卓人って呼んで。僕も理乃って呼ぶから」
そう言ってもう一度理乃に口づける。
彼女怯えてもいないし、僕を拒絶する様子はない。
「……卓人さん」