すると、もう午後七時時近いのにまだ中山さんはいた。
必死でパソコンと睨めっこしながら何やら内線で話している。
何かトラブってるのか?
でも、今気になるのはそこじゃない。
彼女の手。
見ると案の定水膨れが出来ていた。
あれは冷やしてない。
今更遅いかもしれないが……。
「こっち来て」
内線を勝手に切って、中山さんの手を掴んで給湯室まで移動する。
「え?杉本さん、どこへ行くんですか?」
「火傷、痛いでしょう?」
少し強い口調になっていたかもしれない。
何の手当てもしない中山さんにイライラした。
蛇口をひねって流水に彼女の手を浸す。
「あの……杉本さん、自分でやりますから。手、離して下さい」 
彼女の言葉で、自分の頭の血管がブチっと切れたような気がした。
「ムカつくんだけど」
そう呟いて、顔を近づけ中山さんの唇を奪う。
彼女の唇は震えていた。