一条さんの言うように、好きだと思った時に告白しなかった俺はただのヘタレだった。
それに何より東雲さんは、一条さんが側にいるととてもいい表情をする。
一条さんといるとパッと花が開くように頬を染めてはにかむ。
彼といるととても幸せそうだ。
彼女が幸せならそれでいい。
悔しいけど、ふたりはお似合いだ。
「杉本さん、今日の打合せ資料のコピー、何部でしたっけ?」 
今月から俺の下についた庶務担当の中山さんが聞いてくる。
覚えられないなら、なぜメモしない!
ちょっとイラっとした。
「十三部だよ」
すかさず答えたけど、ちょっとムッとしたのが顔に出てしまったかもしれない。
どうしても東雲さんと比べてしまう。
あの人は、いつも人のために先を読んで行動していた。
でも、中山さんがそのレベルにいくには十年以上かかりそうな気がする。
彼女を見ているとなんだかイライラする。
「わかりました。ありがとうございます」
彼女がニコリともせずコピー機のところへ走っていく。