俺の親友がこの春結婚式を挙げた。
『俺は結婚してもいいと思ってるけど』
独身主義だった奴がオフィスで俺にそう言ったのは、去年の十一月だったと思う。
それから一ヶ月ちょっとで奴は愛する女と入籍。
クールで女は不要と思っていた奴がそんなスピード婚を果たしたことにただただ驚いた。
俺の親友、一条瑠偉には破天荒な母と姉がいる。
そのふたりに小さい頃からかなり苦労させられたのか、一条はどんな女に対してもとても冷ややかだった。
一体何人の女が奴に笑顔でふられたのだろう。
その数の単位が百だったか千だったか。
多すぎてもう覚えていない。
多くの女が奴のエセ王子ぶりに騙され、奴を好きになる。
そんな女たちに一条が惚れる事はなかった。
恋は盲目と人は言う。
独身主義の一条が、自ら惚れた女をアシスタントにして口説くと一体誰が予想しただろうか。
多分、彼の親族も予想しなかっただろう。
『彼女以外は結婚する気がないから、お前も協力しろよ』