絶対に捕まえないといけない。
慌てて彼女を追った。
「芽依!」
彼女になんとか追いついて腕をつかむ。
「なんで追ってくるの!」 
芽依は泣きながら叫んだ。
彼女は半狂乱だった。
俯く彼女の頬に触れ、努めて優しく問いかける。
「どうして泣いてるの?」
芽依の涙を拭おうとしたその時、彼女は俺の手を振り払った。
「いや!見ないで!」 
自分の手で顔を隠した芽依を、俺は人目もはばからず抱き締めた。
「落ち着いて、芽依」
彼女を守るように腕の中に閉じ込め、耳元で囁く。
暴れる様子はない。
「大丈夫だから落ち着いて。大丈夫」
何も怖いことなんてない。
俺は彼女の髪に口付ける。
少し落ち着いてきたかと思ったが、彼女は尚も拒絶の言葉を口にした。
「……お願い。離して」
彼女の悲痛な声に胸が痛くなる。
でも、離すことなんてできない。
悪いがもう離せない。