「……いない」
一夜を共にした女性に逃げられたのは初めてだった。
自分が行きずりの女性と寝ること自体初めてだったが。　
夢ではない。
ベッドには彼女の温もりが微かに残っている。
確かに彼女はいた。
あれほど幸せな時を過ごしたのに、朝目覚めるとベッドに自分しかいなかったのはとてもショックだった。
安心しきって熟睡していて彼女がいなくなった事にも気づかないなんて。
「俺も馬鹿だな」
シーツをギュッと握り締め自嘲する。
プライドが傷ついたというよりは、何か大事なものを失ったような喪失感を覚えた。
「どうしていなくなった？」
思わず口から出た言葉。
問いかけても答えてくれる人はいない。
彼女も自分と同じ気持ちでいてくれてると思ってたのに、なぜ自分の前から消えてしまったのかわからない。
しばらく呆然としたまま動けなかった。