母もやっと東雲の家に戻れて安心したんじゃないだろうか。
「覚悟はいい？提出しちゃうと待ったなんてできないからね」
「婚姻届に記入した時点で決めました。確認する必要なんてないですよ」
「それって昨日だよね？覚悟決めるの遅過ぎじゃないかな？」
瑠偉さんの目つきがちょっと鋭くなる。
あっ、やばい。
このままだとお仕置きされる。
「そんなことないですよ。それより……」
あたふたしながら慌てて話題を変えた。
「私も一条になるんですね。瑠偉さんは会社でだけ一条で本当の名字はお父さまのを名乗ってるのかなって勝手に思ってましたけど」
「一条を名乗るのは父が母と結婚する時に祖父が出した条件だったらしい。父はフランスに戻ると仕事の関係もあるけどフランス姓のデュボワのまま。母はフランスでも一条で通してるらしい。夫婦別姓が当たり前の国だからね」
瑠偉さんの説明にゆっくりと相槌を打つ。
「なるほど。でも、なんだか複雑ですね」