でも、東雲の家や私が認知されてない話は聞いてたはずだ。
ひょっとしたらすでに杏樹さんからも聞いてたかもしれない。
鋭いあの人には、私の心情なんてお見通しに違いない。
朝の申し送りの時にどんな顔して会えばいい?
部長室に入るのが正直怖い。
こんな時同じ職場なんて逃げ場がないじゃない。
会社を休めるものなら休みたかった。
でも、仕事を放棄するわけにいかない。
あ~、こんなグジグジ悩んでウジ虫みたいな自分に嫌気が差す。
部長室の掃除は後にしよう。
何も考えたくなくて部のコミュニティースペースの掃除をしていると、杉本くんが現れた。
「東雲さん、おはようございます」
まだ始業時間まで結構時間あるのに、こんなに朝早く来るとは感心だ。
スーツも上手に着こなせるようになったし、杉本くんは将来もっといい男になるだろう。
「杉本くん、おはよう。昨日は本当にありがとう。無事に終わってホッとしてるよ」