杏樹さんは、綺麗な唇に指をやりながらポツリと呟く。
「西嶋さんにダメージ与えるためにやったって事ですか?」 
西嶋さんがショックを受けて動けなくなることまで計算づくとは、ほんとに凄い。
でも、自分の顔傷つけてまでやるなんて、私の方が心臓もたないよ。
「多分ね。まあ、それだけ芽依ちゃんを守りたかったって事。だから、西嶋さんが言ってた事は気にしないの、いいわね?」
「はい」
杏樹さんは優しい。
でも、自分が認知されてない子供なのは事実だ。
世間的にどうだろう。
このまま本当に彼のそばにいて良いのだろうか?
西嶋さんの言葉が私の心を暗くする。
私の瞳が陰るのを杏樹さんは心配そうに見ていた。