ようやく覗き込んだ試合は、
ベスト4決めの試合で。
あ…
タイムアウトの際にある少年と目が合う。
途端にキラキラする目。
さっきあおが見せてくれた子…
「宮本選手!俺、渉(わたる)って言います!大ファンです!見ててください!」
大興奮で俺に向かって話す彼の頭を監督とチームメイトが叩く。
そりゃ試合中だからな。
「渉ね…」
「木村渉くん。高校三年生。身長189cm。まだ伸びるだろうけどね。」
さっきまでの他人設定はどうしたのか、あおがペラペラと情報をくれる。
それが少し悔しい。
彼女は今、下でゲームしてるあの少年に意識が持ってかれてるから、他人設定がどうでもいいというか頭から抜け落ちてる。
木村、渉…ね。
あおの近くにいると嫉妬ばかりだ。
自分がこんなに嫉妬しいだとは夢にも思わなかった。
バレーだっていいなと思う人はいたけど、
現に健さんのフォームとかめちゃくちゃ参考にしたけど、
嫉妬をすることはあまりなかった。
その時間を努力に回したらその人の羨ましいと思うところを吸収できる。
そう思ってた…けど、
…あおの隣は新しい自分が見えて楽しい。
あおはぶつぶつ言いながら、またメモを取ったり、カメラで動画を撮ったりしてる。
「前よりジャンプ高くなってる?でも膝への負担が…うーんまずはフォームの改善?身体作り?」
…バレーしたい。
健さんを見ると、そんなあおを見てにっこり。
…シスコンだなぁ。
わかるけど。
とっても、わかるけど。