持ち主の子がバットの傍で呆然としている。隣にいる子が一所懸命励ましているけれど、沈んだ顔は晴れない。その様子を、黒人間はただ眺めている。
「おい、アカリ。タイムリミットだ。修復急ぐぞ」
お腹に圧迫を感じてすぐ体が宙に浮いた。
ずんずん上昇していく私を、呆気に取られて口を開けたまま眺めている人がいる。飛ぶところも、パンツも見られちゃっている! けれど、そんなことよりもっと大事なことがある。
「や、待ってよ。あのバットどうすんの? それに黒人間は?」
「心配すんな、見ろ」
黒人間がバットの横で跪いて、持ち主に謝ってるのが見える。初対面なのに、私の言うこと信じてくれるなんて、わりと素直なのかもしれない。これも、玉と一緒に毒気が抜けたおかげなのか。
「それに、罰はもう十分受けただろ。お前の一発はかなり痛ぇから。それに、あの感情が割合丈夫な物に向いて良かったんだよ」
「そっか。人じゃなくて、まだ良かったんだよね」
でもなんか哀しいよ。大切なものを目の前で壊されたんだ。もしも、パパの竹刀を目の前で壊されちゃったらって、考えるだけで涙が滲む。