「アカリ、まだ終わってねぇぞ。もう一発だ」
「え? もう一発?」
見れば、黒人間の顔だけ見えるようになったが、体全体の黒靄が晴れていない。
「早くしろ。取れかかった玉が奥に引っ込む」
「マジですか~!」
「軽く叩けばいい」
注目を浴びている中、座り込む黒人間の頭をパコンと叩くと、肩から玉がびゅんっと飛び出してきた。
靄が徐々に晴れていき、黒人間の全貌が見える。結構若い男の子だ。もしかしたら同い年かもしれない。
「いってぇな。ん、あれ? ここ何処だ? オレいつの間に? アンタ誰?」
頭を押さえた黒人間が、目を瞬いて呆然と私を見ている。もさ髪男と同じで、玉が憑いていたときのことを覚えていないのだ。ということは、この男子は、何日もの記憶がないのか。
「ここはスタジアムだよ。覚えてないだろうけど、言っちゃう。アンタ、人の物を壊すなんて、最っ低なんだからね!」
びしっと、ベコベコにへこんで曲がったバットを指差した。
「何だあれ、ひっでえな。つか、もしかして、オレがやったの?」
「そうだよ。アンタがやったの。あの子に謝んなよ! アンタにとってはただの棒でも、あの子にはすっごい大事なバットなんだから!」