正眼に構えた竹刀をひらひら横に振って見せた。もしかしたら見えないかもしれない。だけど、悪玉が入った黒人間には見えるかも。それに、賭けた。
狙うのは、胴。そう、お腹だ。
「あぶない!! 逃げて!!」
「おい、何やってんだ! 逃げろ!」
「コワス!!」
竹刀を持つ私を見た黒人間は、バットを大きく上に振り上げた。脇からお腹全部が全開になる。
その瞬間を逃さず、ぐっと地面を蹴って、黒人間のお腹めがけて踏み込んだ。
「やああぁぁぁっ!」
パシーン!と、小気味いい音が響く。
ありったけの気合を入れて胴を打ち抜き、振り返り見ると、黒人間は前のめりに倒れていった。カランカランと、ひん曲がったバットが地面で跳ねる。
「なんだ? アイツ、どうして倒れたんだ」
「今何が起こったの? あの女の子何をしたの?」
うわっヤバ。みんながざわついて、私と黒人間を交互に見ている。
早く玉を回収して、ここから逃げなくちゃ!
高見の見物をしているだろうアイツを探す。
「アクマ天使はどこ?」
きょろきょろしていると、目の前にキラキラ光る白い羽が一枚、ふわふわと落ちてきた。
アクマ天使はすでに姿を変えていて、私の頭上でふわふわと浮いている。