天使の武器といっても、竹製の棒だ、金属製のバットには負けるかもしれない。

 まともに受けたら折れて、体を打たれるかもしれない。

 怖いけど、アクマ天使は頼りにならないし、こんな事態になったのは、モタモタしていた私も悪いのだ。

 アレを止められるのは、天使の助手だけ。

 試合だって、自分よりもはるかに強い相手と闘う時があった。

 そんなとき、いつも、自分に言ってた魔法の言葉がある。

「大丈夫。私は、強い!!」

 大きく深呼吸をして竹刀を握り直し、暴れ続ける黒人間に近付いた。

「ちょっと! いい加減にやめなさいよ!」

 黒人間は息を切らしているけど、振り回すのをやめない。なんとかこれを止めさせて隙を作らないと、体を叩けない。

「おい、近付くな! 危ないぞ!」

「今警察呼んだから。離れたほうがいいよ」

 あっちこっちから声がかけられる。叩いて壊れた地面から、コンクリートの破片がビシバシ飛んでくる。

「コワス! コワス!」

「ねえ、それよりも、もっと壊れやすいものが、ここにあるよ。壊したいんでしょ?」