騒ぎが広がり、みんなが黒人間を止めようと群がっていて、ますます近づけなくなった。背番号のない背中が、黒人間の靄で黒く染まっていく。

「うわあああ! 危ねえ!」

「逃げろ!」

 その輪が、一気に散った。

「コワス!! ブチコワス!!」

 みんなが遠巻きにしているその中心で、黒人間がバットを二本持って、振り回している。

「ウガア! ガアァァァ!」

 怪獣みたいに叫び、狂ったようにバットを地面に叩きつけている。

「ああぁぁ、アレ! 俺のバットがぁ! 何度もヒットが打てた大事なヤツなのに!」

 背番号のある子が走ってきて、顔を歪めて叫んでいる。

 今にも走り寄りそうなのを、周りの子達が必死で止めている。

 バットって、剣道で言えば竹刀と同じくらい大切なものなんだろう。どうして黒人間はあんなことをするのか。悪玉が入ったからって、そんなことしちゃいけないのに。