卑怯だけど、後ろから回り込んで、肩を叩くことに決めた。
竹刀をぐっと握り締めて、黒人間の方へそろりそろりと近付いていく。
気付かれないよう、すり足で移動していると、ロータリーに大型バスが一台停まった。
野球のユニフォームを着た子がわらわらと降りてくる。このあと試合をする学校かな。こんな時に来るなんて、間が悪い。一か所に荷物を固めて置いて、多目的広場のある方へ移動していく。
黒人間がすぐ傍にいるのに、みんな普通にしている。
あの不気味さが分からないんだ。あの状況で無防備な黒人間を倒したら、私が悪者にされてしまいそうだ。
不安になってアクマ天使の方を見たら、行け!ってジェスチャーをする。
「もう、人使いが荒いんだから。何かあったら、責任とってよね!」
睨んでもアクマ天使は動じず、無言で顎をしゃくるだけだ。
うー、とりあえず、もう少し人が減らないと、行けない。
「やだっ、ちょっと。あの人何してんの!?」
黒人間は、一年生っぽい子たちが持っているバットがたくさん入った箱を奪い取ろうとしていた。
「カセ! コンナノ、ブチコワシテヤル! コワス!」
「おい、やめろ!」
「ゼンブコワス! ブチコワス!」