黒人間は歩きながらブツブツ呟いている。男の声みたいだけれど、何て言っているのか分からない。
「憑いてから結構日が経ってるな。お前には分かり難いだろうが、玉は右肩にあるぞ」
「それって、体に入り込んでるってことなの?」
「ああ、厄介なことに同化しかかってやがる。あれが完全に同化したら、黒靄が消えて、その辺の奴らと見分けがつかなくなるぞ。おまけに玉が取り出し難くなる。急げ」
「急げって、私が行くの!? って、熱いっ」
手の甲にある印がピカーと光って、竹刀がにょきにょきと出てきた。
「ちょ、やだ待ってよ! 悪玉の処理って、私に出来るの!?」
「当然。助手の仕事だぞ。お前なら大丈夫だ。前みたいに叩きゃいい」
「叩けばいいって言われても……」
ブツブツ独りごとを言いながらゆらゆら歩いていて、ほんとに超不気味なんだけど!
それに、悪いことをしていない人を叩くことが出来ない。
でも……それでも、やらなくちゃいけないんだよね。これから何か仕出かすかもしれないし。
こっそり近づいて、竹刀の先っぽで、ちょんと突けばいいか。それだけで、玉が取れればいいけれど。
「よし、行く!」