アクマ天使は何かに導かれるように、通路を戻って行く。その背中を追いかけていると、ナビっちが急に騒ぎだした。

「ピコンピコンピコン。キタヨ、キタヨ」

「ナビっち、どこに来たの?」

 ナビっちがこの反応をするときは、近くに玉があるってことだ。でも細長い通路の前も後ろ側も、玉はない。

 アクマ天使はまっすぐ出口に向かい、スタジアムの外に出て、唸るように言った。

「予想以上にやべぇぞ。見ろ、アカリ」

「え……すごく、黒い」

 アクマ天使が指で示した方角に、全身黒づくめの不気味な人がゆっくり歩いている。男か女か、若いのか年なのか、判別ができない。

 さんさんと陽が当たっているのに、足の先から頭まで、影みたいに黒くて目だけが白く光って見える。

 あれは、本当に人なの? 幽霊とか妖怪みたいですごく怖い。

「もしかして、悪玉のせいなの?」

 アクマ天使の制服の端っこを、ぎゅっと掴んだ。

 黒人間は一歩動くたびに、輪郭がぼやぼやと曖昧になる。霧のようなものに、体全部が覆われているみたいだ。

「ね、玉が見えないよ? 悪魔じゃないの?」

「悪魔じゃねえ、れっきとした〝人〟だ」