「ったく、何度も言ってるだろうが、地上からは見えねぇぞ。まあ仕方ねぇ……怖がんなよ」

 ぶつぶつ言いながらも、ぐんと高度を上げてくれる。

 空を飛んでいる姿は光の塊にしか見えないらしい。だけど何度そう言われても、乙女としては心配なんだ。

 いつか誰かに「ね、昨日空飛んでたよね?」って言われそうで、ドキドキしちゃう。

 向こうの方にキラキラ光る細長い筋が見える。あれが川だ。その近くにある丸いスタジアムや私の高校も見える。

 商店街も広かったけど、それよりももっと範囲が広い。

 川の近くのどこに玉があるのか、アクマ天使は分かっているのかな。どの辺から探すんだろう。ナビっちはどこを指しているのか。闇雲じゃ、時間がかかっちゃう。

「ちっ、厄介だな」

 いきなり、体がくるんとひっくり返された。

「はっ? むぐぅっぷ」

 びっくりして、とっさに変な声が出る。

 私の体が二本の腕でシッカリ抱え直されて、顔が胸にぎゅうっと押し付けられた。アクマ天使の低い声が胸の辺りから響いて聞こえてくる。

「じっとしてろ」

「ん―――っ」