窓の桟に足を掛けたアクマ天使の背中からふわっと翼が生え、抱えられた私の体は軽々と宙に浮いた。
キラキラする目映さに目を細めながら、春川さんに手を振る。
「あの! お皿を片付けなくてごめんなさいっ。じゃ、行ってきます!」
「はい、朱里さん、リクトール様、行ってらっしゃい。お二人ともお気を付けてー」
高度が上がっていき、教会の屋根がぐんぐん小さくなっていく。
地上からの音が遠退いて、風を切る音と羽ばたく音だけがする。
何度も空を飛んでいるから、色々慣れてきた。観覧車や山なんか全然比べ物にならない、とんでもない高度にも。車より早いスピードも。風を切る息苦しさも。
それに、どうして居ればアクマ天使が飛びやすいかも分かってきた。
なるべく動かずにぴたーっとくっつく。たったこれだけ。ぎゅーってしがみついても駄目。舌打ちされるのだ。
今日はいつもよりも低く飛んでいて、車が通ったり人が歩いたりしているのが、小さいけれどハッキリ見える。
だから、私のお腹辺りにあるアクマ天使の腕を、ぺしぺしぺしぺし叩いた。私が出来る唯一の合図で、もっと高く飛んでっていう意味だ。