頬の痛みが治まってきたので、残りのカルピスを一気に飲み干す。氷、ほとんど溶けちゃったな……。
「おい、そろそろ行くぞ」
「へ? どこに?」
「塾に行くんだろ」
「あ! そうだ! 今何時?」
慌てて時間を確認してみると。もう十五分前だった。
焦りながらカバンを持って駈け出すと、長い腕に、ひょいと体を攫われた。
ばさっと羽音がして、足がぶらぶらと浮く。
ひゅーんと、結構なスピードで狭い廊下を行くもんだから、アクマ天使の腕に必死にしがみついた。
「ちょっと待って。ね、玄関開いてないよ、ぶつかるよ? どうすんの?」
「うるせぇな、黙ってろ。……ウヴェル」
このまま行ったらぶつかる!と思った寸前、玄関がすーと開いた。
開けるならもっと早くしてくれればいいのに、心臓に悪い。
外に出ると、春川さんが庭の水撒きをしているのが見えたので、大声で呼びかけた。
「春川さーん、ジュースとポテチご馳走様でした! 今から塾に行ってきます!」
「いえいえ、お粗末様でした。朱里さん、勉強頑張って下さい」