ガタンと、椅子から立ち上がったアクマ天使の勢いにびっくりして、口が開いたまま止まった。
次いで、バン!とテーブルを叩くから、私の体がビクッと揺れる。
おまけにすっごい怖い顔が近付いてくるから、限界まで仰け反った。席を立って逃げないのは、足が震えて動かないせいだ。
「な、あの、ちょ、怖いよ?」
「お前はなぁ」
テーブルの上にあった手が、にゅっと伸びて来て私の両方の頬をぎゅうぅ~と摘まんだ。テーブルごしなのに軽々届くのが悔しい。
「いっ、いひゃい、いひゃいっ」
アクマ天使の腕をバシバシ叩いてみる。痛いと分かってくれたのか、少しだけ力が緩んだ。
「いいか。これが最後だ、よく聞け。助手の分際で、一人で行動しようとするんじゃねえ。分かったか。分かったら返事しろ」
強い眼光をもつ顔が目の前に迫ってくる。もう少しで鼻先がくっつきそうで、頬の痛みと緊張で、ぐるぐると目がまわる。
「ひゃい。わかりまひた」
「ったく、今の返事忘れんなよ」
すーっと軽くなった頬を涙目になって両手で擦る。これで二度目だ。
「んもぉ、痛いよっ。か弱い乙女の顔になんてことすんの!?」