二つとも同じに見える。
違いを探そうと思って真剣に見ていたら、玉の中から文字が浮き出てきた。
一個の文字の形は覚えている。昨日見た『愛』と、もう一個のは――。
「んー、これ何て読むの?」
「『執』だ。コイツは、あの螺旋髪の強い念に反応したんだ。この国の言葉なら、執念、執着、執心。あんまりいい言葉じゃねえだろ」
玉の文字がどんどん薄くなっていく。あのとき瑠璃菜は先輩をずっと見ていた。きっとものすごく強い想いを持って見ていたから、玉は引かれたんだ。
もしもこれが瑠璃菜についていたら……嫌な考えが浮かんでしまった。
テレビのニュースでよく見るストーカー事件。待ち伏せしたり、家に忍び込んだり……。
あの瑠璃菜がそんな怖ろしいことなんてしないと思うけれど。もしも憑いたことに気付かずにいたら、『執』の資質だけが膨れ上がって、そんな風になったかもしれない。
考えただけで、背筋がぞっとする。
「そうだ! ね、呪文教えてよ! いざという時に知らないと困るもん」
「呪文? 一体何のことだ」