「イチャイチャなんて、してません!」
大事な話をしてただけなんだから! やめてよね! もう!
両手をぶんぶん振って慌てて否定しながら、仕方なく席に着く。
「はい、もう静かにしろ。教科書を開け。五十二頁だ」
ざわざわしていた教室内が静かになって、授業が始まった。
先生の声と、チョークの黒板を叩く音が教室内を支配する。
でも、私の頭の中は、パタパタと羽を動かす小さな玉のことでいっぱいだ。先生の言っていることがちっとも耳に入ってこない。
今は、大昔に使っていた言葉なんて覚えている場合じゃない。
ソワソワしながら受ける授業は、時間が経つのが遅い。壁掛け時計のノロノロ動く秒針を睨んで、早く動け~と、ひたすら念を送り続けていた。
そんなだから、チャイムが鳴って先生が教壇から降りるとすぐにアクマ天使のとこに駆け寄って行った。
香奈が呼びとめた気がして振り返ったら、何か言いたそうな顔をしている。
「ゴメン。あとで聞くね! 今は急ぐんだ」
「うん。後でね?」
曖昧に笑う香奈に手を振って、無駄に長いアクマ天使の腕を引っ張る。
何でゆったり席に座ってんの! 早く早く!