「女神からの伝言だ。【後悔はしていない。朱里の思う通りに生きなさい】だと」

 それって、パパの伝言? 

 私、口に出してないのに。女神様は聞いてくれたんだ。

「はい。精一杯生きます」

「──お別れだ」

「行っちゃうの?」

 光輝く手が私の頬を包む。

 鋭いけれど優しい目。この瞳、もう二度と見れないの? 忘れちゃうの?

「そんなの、やだよ」

「アカリ、お前は、特別だ」

 ゆっくり顔が近づいてきて、自然に目を瞑ると、唇に、柔らかいものが触れた。唇と頬に感じる温もりが消えて、目を開けた時には、アクマ天使の姿はどこにもなかった。

「リクトール!」

 大きな声で呼び掛ける。けど、セミの声と風に吹かれる枝の音が聞こえるだけ。

「行っちゃった――」

 へなへなとしゃがみこむ。涙が溢れてくる。

 声を出して泣き続け、しばらく、そこから動くことができなかった。