アクマ天使の顔がだんだんぼやけてくる。

 これが最後なんだから、もっとはっきり言って。

 長い指が、私の髪をすくっては零す。それがすごく優しくて、ますます涙が出てくる。

「あん時言っただろうが、綺麗だと思う奴は一人だけだって。この先誰に会っても、それは変わらねえぞ」

「それって。それって、私だと思っていいの?」

 頬を伝う涙を、アクマ天使の指が拭う。

「お前だけだ。ここで竹刀を向けてきたお前に一目ぼれってやつだ」

「ほんとに?」

「俺は、嘘は言わねえ。ほら、泣くんじゃねえ。困るだろうが」

「泣き止めないよ。だって、大好きなんだもん」

 もっと困って欲しい。

 困って、困って、困り続けて、このままずっと一緒にいて欲しい。

「印を消して、私の記憶も消しちゃうの?」

 ずっと、気になってたこと。

 アクマ天使は黙ったまま何も言わない。

 そんなのやだよ。この日々が消えちゃうなんて、ダメだよ。だって、この好きっていう想いだけは、残っちゃうんだよ。

「忘れたくないよ。やだよ。お願い、消さないで。お願い」

 アクマ天使の輝きが、だんだん強くなっていく。

 待って。まだ行かないで。