「人質にしてどうすんの。私なんか人質にしたって、何も変わんないよ」

「変わるさぁ。あの結界を外して貰うんだよ」

「あれのせいで、みんな外に出れないじゃん?」

「出れないのは、魔族だけ! だから、アンタたちは出なくてもいいよ!」

 いつでも反応出来るように、油断なく動向を見る。このふたりに捕まったらいけない。アクマ天使に迷惑がかかる。

「俺達、魔族じゃないぜ?」

「お前、生意気だぞ。イライラさせんな!」

 チャラ男Aのナイフを握る手の向きが急に変わった。相手が一歩を踏み出す前、考えるより先に、私の体が勝手に動いた。

「たああぁぁーーーっ」

「うぐぐぅぇ」

 気づいたら、私の竹刀の先が、チャラ男Aの胸をしっかり捉えていた。

 パパの得意技だった『突き』だ。

 本来は喉を突く技。だけど、防具がない人に当てることはできない。だから無意識に、胸を狙っていた。

 チャラ男Aの頭がぐらりと前に傾いて地面に膝をついた。肩のあたりから黒いモヤがシュワシュワ出てくる。

「アカリさん、あと一息です!」

「あ、サナダさん?」

 隣に、息を切らせたサナダが立っていた。それにニイヤマもいる。