「だって、こんな事になってんのに、じっとしていられないよ。出来ることがしたかったの。リクトールの、役に立ちたかったの」

「その結果がこれだぞ! バカか! お前は、俺の言うことだけ聞いときゃいいんだよ!」

 ムカッとして、ガバッと起き上がって、リクトールを睨む。

「何それ! 忍者天使の使者なんかじゃダメだもん! だから、直接言いに来いって言ったじゃない! 伝言聞いてないの?」

「ちっ、お前はもう黙れ! 黙っとけ!」

 いきなりぎゅっと抱きしめられた。

「命が尽きれば、誰にも戻せねぇんだぞ! ……心配かけんな。頼むから」

 最後、急に優しい声になった。耳元で囁くように言われて、胸がとくんと高鳴る。

「ごめんなさい」

「仕方ねぇ、俺は〝くそったれ〟だし。お前の気が強いのは分かってたんだ。今からは、俺の目の届く範囲にいろ」

「うん。そばにいる。絶対離れない」

 だから、お願い。リクトールも離れて行かないで。

 突然、ふわっと、柔らかいものが頭に落ちてきた。ぱらっと垂れてくるのは、紺色でトンボ模様の布。

「これ、パパの竹刀袋……」

 頭の上で、ぴぃちゃんがパタパタと飛び回っている。