武器を手にした私は、その流れに逆らって進んだ。
見物人達の焦った声が聞こえる。戻れって腕を掴まれる。駄目だ! 危ない!って声もたくさん聞こえる。それ全部を振り切って、もさ髪男に近づいた。
女の子は震えて泣いている。私は唇を噛んで、光る竹刀を構えた。狙うのは、手と頭だ。
「その子を離してよ!」
「ウエルセエ、アッチニイケ!」
もさ髪男は汗びっしょりで、ハサミをぶんぶん振り回す。
けれど、そんなの全然怖くない。昨日のアクマ天使の弓矢に比べれば、へぼへぼのヘッポコだ。
抱きついて女の子を泣かせて、おばちゃん突き飛ばして、あんた最低な男子だよ。
もさ髪男の腕が止まった一瞬、体が勝手に動いていた。
「きえええぇぇぇい!」
商店街の中に、私の気合の入った声と、竹刀の音が二度響いた。狙い通り手と頭に当たり、モサ髪男はハサミを地面に落として、そのままその場にへなへなと座り込んだ。それで、頭を押さえながら茫然としている。
「え……俺?」
何よ、そのキョトンとした顔。もしかして今やったこと、覚えていないの? 全部玉の影響かもしれないけれど、そんなことはこの際どうだっていい。