竹刀を槍のようにし、ずんぐり魔族に渾身の力を込めて体当たりする。
すかっと通り抜けることを覚悟していた。けど予想外にもガツンと当たり、魔族はしりもちをつく。
ぐええぇっと蛙が轢かれたような声を出し、土玉を持ったまま腕を振り回してバタバタあがいた。
「あの、何があったの?」
「今ここに悪いものがいるんです。お願いです。早く逃げてください。でないと危険なんです。あそこのレストハウスなら安全です」
必死で訴えて回る。逃げて。逃げて。お願い早く逃げて。レストハウスに行って。
走り回ってるうちに、あたりが暗くなっていることに気付いた。
道に落ちている自分の影が、薄い。さっきまで、太陽ギラギラで天気が良かったのに。
上を見ると、お化け屋敷から出続けているモヤが、空を覆い始めていた。