「いえ、大変失礼しました。あなたのことではありませんの。どうかお気を悪くなさらないで。ああほら。もうじき、慌てふためいた彼が来ますわ」
「慌てふためいた、彼?」
「ええ」
銀髪天使は優しい笑みを湛えた。
「失礼します」
聞き覚えのある声がし、振り返ると、アクマ天使がスタスタと部屋に入って来た。白い布を腕に提げており、私には一瞥もくれずにまっすぐ銀髪天使の方へ向かって来る。
そして一礼をして、すっと跪き、銀髪天使の手の甲にキスをした。その仕草が優美で、まるで映画のワンシーンを観ているようだ。
「本日も御機嫌麗しく、喜ばしいことです。御挨拶が遅れて申し訳御座いません」
「良いのです。今、こうしているのですから」
銀髪天使は嬉しそうに微笑んで、アクマ天使を見つめている。なんだか見ていられない。
二人から視線をそらし、ちびっこたちの方へ移動した。まぶしすぎるほどに、お似合いだ。
「私事で大変ご迷惑をおかけ致しました」
「いいえ、楽しい思いをしました。おかげで、良いものを見せていただきましたもの。それに、それから身から離したのは、ほんの僅かな時間です。私がそばに居りましたし、彼女の魂に影響はないでしょう」