「あなたの、お父様ですか?」
銀髪天使は、キョトンとして首を傾げている。
「はい。三年くらい前に、天国に来ている筈なんです。亡くなった人は、ここのどこにいるんですか?」
せっかくここまで来ているんだ。パパに会えるなら、会いたい。
「亡くなった方達は、こことは別の場所、浄化街におられます。再び生まれおちるその日まで、魂を清めるのです。そこで無垢な魂となり、精玉を補い入れて生まれ変わり、また違う人生を歩むのです。まだ三年程度なら、お父様もそちらにおられる筈ですわ」
「浄化街。それは、ここから遠いんですか? 亡くなった人には会えないんですか? パパに会いたいんです」
聞きたいことがある。パパは、警察官になったことを後悔していないのか。パパの最後の言葉を聞けていないから、メッセージがあるなら聞きたい。
「それはできません。あなたがここにいること自体、特例なのですよ」
銀髪天使はきっぱりと、厳しい声で言う。
そもそもここは、生きてる人が来ちゃいけない場所なんだ。
「そう、ですか。すみませんでした」
「いいえ、会いたいと思う気持ちは分かりますわ。でも、いかなる者も摂理は曲げることが出来ません」
そう言うと銀髪天使はふとなにかに気づいたように、少しだけ目を見開いた。
「……あらまあ、大変。やっぱり思った通りだわ」
銀髪天使が、いきなりぷっと噴き出して、コロコロと笑い始めた。
「あの、私、変ですか?」