「隠れ鬼してて、走り難くて脱いでしまいました。衣は、木に引っかけてあって……あの、すみません。今から取りに行ってきます!」
慌てて立ち上がろうとすると、しなやかに伸びてきた手で制された。
「あら、いいのです。どうかここにいらしてくださいな。そうなのですか。衣を木に……これは、大変面白いことですわ」
何が可笑しいのか、銀髪天使は上品に笑う。
アクマ天使には、女神以外にも、こんな女性が身近にいるんだ。
『いつも身近にいるヤツ』とは、きっとこのお方のことだろう。髪もツヤツヤサラサラだし、手触りよさそうだし。
それに、私のことを頼めるということは、我儘を言える親しい関係ということ。きっと彼女なんだ。
……やっぱり、早く天界に帰って貰わなきゃね……ちびっこも、この人も、彼を待っているから。
「あらあら。どうしたのですか?」
「あ、何でもありません。なんだか私、ここに来てから涙腺がおかしいんです」
こんなところで泣くなんて、すごく恥ずかしい。
頬をパシパシ叩いて目をゴシゴシこすり、なんとか涙を止める。
「あの、すみません。えっと、そう。ここが天だと思ったら、亡くなったパパのことを考えちゃって。そうすると、どうしても……涙が出てきちゃうんです」