女の子天使が、心配そうに眉を歪めている。男の子天使たちも、私をじっと見つめている。
「おねえちゃん、ないてるよ?」
「え、うそ。ほんとだ。どうして泣いてるんだろ」
止めようと思っても、溢れる涙は全然止まらない。
何で?
帰るって分かっていることなのに。逆に、帰って欲しいと思っていたのに。どうして泣けてくるんだろう。
「おい、おまえのせいだぞ!」
「おまえこそ! いじわるいっただろ」
男の子天使たちが言い争っている。止めなくちゃいけないのに、顔を上げることができない。
「こらあ! チビども、そこで何を騒いでるんだ!」
「うきゃあ!」
「ぎゃっ!」
「いやあぁん」
「ん? そこにいるのは誰だ……うぬ~貴様天使ではないな、怪しい奴め!」
私のもとに、野太い声と足音がどんどん近づいてきて、腕をガシっと掴まれた。
「おい、お前、来い!」
野太い声の主は、口髭を生やした天使だった。背中に大きな弓を背負っている。ここの警備天使かもしれない。
「違います。怪しい者じゃありません」
鼻水ずるずるで力のない声が出る。そのせいか、全然相手に届かない。力一杯抵抗しても、どんどん引きずられていく。
ど、どうしよ。ここから追い出されちゃうかも。
「だめ! つれてっちゃ、だめなの!」