「聞いてないかい? リクトールは、女神直結一番隊隊長、通称『鬼の護衛隊長』様なんだ。泣いてるちび天使も黙る、天界きっての武闘派を束ねる怖い男さ。将来は総隊長とも目されている。それなのに――」
トントントントンと音がして隣を見ると、アクマ天使が指先で机をはじいていた。
「――アルバルク」
いつもよりドスの利いた声。アクマ天使は名前を呼んだだけなのに、ヒッて、息を吸うような声を漏らしたアルバルクの顔から、笑顔がすーっと消えていく。
「いや、あーっと、その印が可愛いってことさ。僕は、リクトール隊長の部下の一人だよ。ちび天使の時から一緒の、幼馴染でもある。呼び名はアルバルク。こっちは、僕の助手のサナダ。今さらだけど、よろしくね」
「ハイ、私は朱里です。よろしくお願いします」
新事実。アクマ天使は下っ端護衛じゃなくて隊長様。そうでなくちゃ女神に近づけないし、ツヤツヤな髪にも触れないか。
さっき、ひったくりを捕まえた時も強かったっけ。みんなにも女神にも信頼されてそうだし、好かれていそうだ。