「サナダ! あと一息だ!」

「はいっ、お任せを!」

 項垂れて動かない歌手の頭を、黒服は光るフレーレで、ペシ~ン! と叩いた。

 その瞬間、歌手は項垂れていた顔をバッと上に向けた。

「うがああああぁぁぁっ―――――」

 空気を切り裂くようなざらざらした声だ。歌手の体から、目映いほどの光りが溢れ出た。

 騒然としていた広場はしんと静まっていて、みんなステージの上を凝視している。

 口を押さえていたり、引き結んでいたり、反対に開けたままだったり。静かに、成り行きを見ていた。

 光が徐々に弱まっていくと、小さな玉が口の中から、ぽんっと飛び出て来た。力尽きたようにその場にヘナヘナと倒れ込む歌手の体を、黒服の腕が素早く受け止める。

「アルバルク様!」

「ご苦労さん。サナダ、よくやった!」

 茶髪天使……アルバルクがすかさず玉を回収し、チカチカ光る袋に入れた。

「今の、何かの撮影だったの?」

「まさか、戦隊物の撮影?」

「黒い服の人何もしてなかったわよね? あの人勝手に倒れたわ」

「フリだけだったろ。あとでCGで繋げるんじゃないか?」

「でもすごい演技力ね。びっくりしたわ」