どこからともなく出してくれたハンカチを受け取り涙をふくと、ふんわりとハーブの匂いがした。

「やるのは歌が終わってからでいい」

「うん」

 でも、私にできるかな。いい人なのに、胸が痛んじゃう。

「いや、リクトール。あれの処理は君のお嬢さんには無理だよ。うちのサナダだって、さんざん苦労してるんだ。ここは任せてくれ。ね……お譲さん、あれは譲ってくれるかな?」

「へ?」

 頭に手の平が置かれている。

 見上げれば、にっこりと笑いかけてくる知らない人がいた。茶色の髪に茶色の瞳、魔法使いみたいな服を着て、全体がキラキラしている。けど、翼が見えない。

 あなたは、誰ですか?

「へえ、凄いね。神父じゃないのに僕が見えるんだ」

 私の頭に手を置いたまま、ぐっと近付いてきて、しげしげと顔を見ている。

「君は、聖職者の娘さんなの?」

「は?」

「おい、アルバルク。いい加減にしろ。お前の助手が苦労してんぞ。フォローして来い」

 私の頭を触っている手を、アクマ天使が掴んでぐいっと離すと、茶髪天使は慌ててイベントの方に顔を向けた。

「おっと、こりゃ不味いな。じゃ、お嬢さん、また後で」