ミルクティー色の長い髪、レース模様のトップにレモンイエローのマキシ丈スカート。華のあるすごく綺麗な人だ。
イベント内容が書かれたポスターを見ると『今話題沸騰中! あの癒しの歌姫が来る!』などと書かれている。
「ちっ、お前に見えねえのは当然だぞ。既に同化してやがる」
「えええ!? 同化!!」
道理で見つけにくい筈だ……と、アクマ天使が苦い声で呟く。
歌手は司会の人に紹介されて、拍手を浴びてステージの真ん中に出てきた。集まった人に対して、笑顔でお辞儀をしている。話す言葉にも異常を感じない。同化しちゃうと、変な行動はしないのかな。
「ね、どうすんの? 歌い始めちゃうよ」
音楽が流れ始め、司会の人が拍手をしながらステージの隅に引っ込んでいく。善か悪か分からないが、この場合はアクマ天使が矢を射るんだよね。
私の出番はない筈。そう思ってアクマ天使を見上げると、信じられないことを宣う。
「いつも通りにすりゃいい。ただ、一回や二回叩いたくらいじゃ取れねえってだけだ。よし、行け」
「は? ちょ、あれも、私がするの?」